大判例

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東京高等裁判所 昭和49年(行ケ)136号 判決

一 前掲請求の原因のうち、同所掲記の登録実用新案について、登録無効審判の請求から審決の成立、その謄本の送達にいたる手続の経緯、考案の要旨及び審決の理由に関する事実は、当事者間に争いがない。

二 そこで、右審決に原告主張の取消事由があるか否かについて考える。

(一) 成立に争いのない甲第四号証(引用例)によると、右登録実用新案の出願前の昭和三四年一〇月一〇日発行にかかる引用例には、児玉鏝製作所の新製品「タイルおさえスポンジ木鏝」に関する広告記事があり、その中で図示されたタイル工事用鏝は、上部に把持体を取り付けた木製鏝板の下面一体にスポンジ製の擦動板が接着され、その擦動板は、鏝板の周縁部から擦動板の厚さと大体同等の幅だけ、突出している構造であること(別紙第二図面参照)が認められ、これを本件考案の要旨と対比すると、引用例の木鏝における擦動板も、その機能を果させるべく、スポンジで形成されている以上、スポンジに通常備わる程度の弾力性があることは当然要求されるところであり、また、その突出部の幅が右に認定したように擦動板の厚さと大体同等であることからすると、その突出部を鏝板の周縁部から上方に湾曲しうることも、明らかであるから、両者の構成は、結局、鏝板の材質の点を除いてすべて一致するというべきである。

原告は、本件考案、特にその擦動板の突出部における技術的思想について、引用例のものとの差異を強調するが、原告の所論は、本件考案の要旨において、タイル工事用鏝の擦動板2が弾力性を有すること、その突出部2aが鏝板1の周縁から彎曲しうることとされた技術的事項そのものが引用例のものと相違するという点に関しては、上記説示したところにより採用することができないのは勿論であり、これを超える点に関しては、本件考案の登録請求の範囲に含まれない原告独自の限定条件を前提とするものと解され、それ自体失当であるというほかはない。

(二) 次に、本件考案において、鏝板を金属製にしたことは、原告自陳のように金属製鏝板が従来、普通に知られていたことに徴すると、格別、新規な考案とするに足りず、これにより、特殊の効果を奏することを認むべき証拠がないから、鏝板が、本件考案においては、金属製であるのに、引用例のものにおいては木製である点は、単なる材料変換に当るといつて妨げがない。

(三) なお、成立に争いのない甲第二号証(実用新案公報)によると、本件考案においては、その考案の要旨のような構成によつて、セメントモルタルを簡単にタイル面の間の目地に押入充填し、タイル面に附着させないで押移し、目地の仕上後に拭取らないまま、タイル面を磨き上げるという効果があることが認められるけれども、引用例のものにおいても、その使用如何によつて本件考案同様の効果を奏しうることは、構成自体から明らかであるから、両者は、その作用効果においても一致するものと認めるのが相当である。

(四) そうだとすれば、本件考案は、結局、引用例のものと同一の考案たるに帰するから、その新規性を否定して、これが登録を無効とすべきものとした本件審決の判断は、正当というべきである。

三 よつて、本件審決に違法があるとして、その取消を求める原告の本訴請求を失当として棄却する。

〔編註〕 本件に関する図面は左のとおりである。

第一図面

<省略>

第二図面

<省略>

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